ある日。精神の領域に興味を持った。感情、心、思考……不確定なモノ。僕を含め、人間の誰もが内包しながらも触れることが叶わない場所。人類が足を浸す広大な海。
僕が人間である限り、それを認識することはできない。この肉体が邪魔だから。形有るものは形無いものに触れられない。けれど興味は尽きなかった。
いかにして精神の次元に肉薄するか。考えた末、一つの可能性に辿り着いた。
僕がそちらに行けないなら、精神をこちらに呼べばいい。偶像を崇めて神を貶めるように、高次の精神を三次元に引き摺り下ろす。僕の興味はその先へ向かった。
精神が、心が形を持ったとき。人間は、世界は、どんな風に変化するのか。どんな風に……。
僕は、実験することにした。(全4話)
※ここから先は、「タイカンオンド」本編に関わる重要なネタバレが横行しております。本編を読んでいただいてから、この先を読むことをお勧めします。※