雨の夜、男は少女を助けた。
彼女が人間ではないと知りながら。
(全25話)
※ここから先は、「レイヴンズ」本編に関わる重要なネタバレが横行しております。
本編を読んでいただいてからこの先を読むことをお勧めします。※
注意書きは読まれましたか?
覚悟はよろしいですか?
それでは、参りましょう。
(文章は2020年7月頃のものです)
はい、どうも蒼井です。
まずは……
「レイヴンズ」完結おめでとう自分!!(切ない)
サイト開設当初から連載していた小説を、今日まで追いかけてくださった方がいるとは思えないので(いらっしゃったら土下座してお詫びと感謝を伝えたいと思います)、とりあえず自分おめでとうと言っておきます。
蒼井が長編小説を書き上げるのは、これが二作目! ゆえに感動もひとしおです。
と、いうわけでここからは「レイヴンズ」全体のあとがきと称して、裏話をいっぱいしていこうと思います。
どうぞお付き合いください。
・始まり
「レイヴンズ」を書こうと思ったきっかけは、非常に単純でした。
「レイヴン」って響き格好良くね?
この一言です(本当酷い)
ちなみになぜ「レイヴン」なのかっていうのは、当時プレイしていたゲームのキャラ名がこれだったんですね。
烏、いいじゃん。そうだ擬人化して羽とかつけちゃおうぜ、自分のキャラにそういうのいないし。ファンタジーでさ、人間と烏は殺し殺されギリギリのラインでなんとか共存してるんだけど、ある人間の元に云々かんぬん……と練った結果が「レイヴンズ」のストーリーでした。
しかし、タイトルに「レイヴン」を使ったばっかりに、キャラ名に「レイヴン」が使えないということが発覚しましてですね(盲点)。泣く泣くヒロイン烏の名前が「クロウ」になったのでありました。
・タイトル
上記の通り、「レイヴン」という響きの格好よさだけでタイトルに抜擢された「レイヴンズ」という言葉。他に意味があるのかというと、特にそういうことはありません。
あえて今意味をくっつけるなら、後で書きますが各キャラの名前には烏の名前が隠されているので、ある意味「烏たち」の物語であるのかな、と思います。
・ストーリー
烏の女の子を人間の男が拾って助ける、というのは最初に考えついたのですが、書き始めた時にはプロットも何もなかったので、その場のノリでひたすら各話書いておりました。イメージは今よりももっと殺伐とした、生死の境を綱渡りするような感じで、ジャンルも全く決めておらず、なんかクロたんと保志弘がいい雰囲気になるといいなーと思ってただけでした。
でも一応書きたいイベントみたいなものはあって、行き詰まったときにそれをひたすら書き出して、うまくつながるようにちょこちょこ話をいじったところで、やっと全体像が見えました。それが大体十九話あたりの話です。なのでその段階で、全話手を加えて軌道修正をしました。プロットの大事さを教えてくれた「レイヴンズ」に感謝。
プロットのおかげで大まかなストーリーは決まりましたが、最後まで迷ったのは最終話終盤です。どこをどうくっつけようかな、と。「レイヴンズ」はハッピーエンドにしたかったのですが、保志弘とクロウはどうするのか、玲於奈の淡い恋はどうなるのか、ナミの片思いは放置でいいのか、いっそ村正と保志弘でくっつけようか……と悩みました。最後のなんか悩みの極みですね。個人的には、一番綺麗にまとまったかと思います。
・キャラクター
各キャラクターに関しての解説を書いていきます。
○白江保志弘(シロエ・ホシヒロ)
最初は本当に普通の人間として書いていたのに、気づいたらすごい設定ができてましたね。しかも混血という特大の秘密を抱えておりました。
この人基本的に泰然としていて、全てを分かっている風だから全然主人公っぽくないんですよね。しかも強いし。成長とか特にしないし。
「温厚なのに実は粗野で喧嘩が強い」っていう設定が欲しくて、村正へのあの態度や黒歴史が存在するという設定を作ったのですが(黒歴史に関しては本編ではほとんど触れられていませんね)、中学高校の保志弘は自分が烏の血を持つことから劣等感を抱いており、誰かに必要とされたくて段々と自己犠牲に走り、最終的には村正とともに悪い奴らをとっちめていた、という裏設定があります(この武勇伝が彼にとっての黒歴史です)。で、その「必要とされたい」感情が大人になるにつれ、混血という自分の存在を肯定するための「烏と人間の共存」という理想に変化していくわけです。
ところで、タイトルの項目で言いましたが「レイヴンズ」のキャラには烏の名前が含まれています。保志弘は「シロエリガラス」から取りました。ちなみに苗字の「シロエ」が保志弘の父親である烏の名前です。
○クロウ
彼女が一番「レイヴンズ」内で変化を見せたので、終盤は彼女が主人公なのではないかと自問していました。
最初はとにかくイライラ最高潮で保志弘食ったるどーと言いまくってたような気がします。それは烏が人間を食べる、という設定だったからなわけですが、その設定やめて本当よかった。その名残のように大食いの設定がありましたが、それもかき消えていましたね。
彼女に関しては、特に隠していることもなく作品中で全てをオープンにしているので、特に解説は必要ない気がします。
あ、強いて言うならあれです、クロウは本気でナミの好意に気づいていませんでした。二人とも学校では落ちこぼれ気味で、そこを接点として知り合っていくのですが、クロウは本気で友達だと思ってました。ナミに告白された際には、かなり戸惑ったでしょう。
彼女の名前に隠された烏は、言うまでもなく「クロウ」です。名前そのまま。
○那字路村正(ナジロ・ムラマサ)
こいつを書いている時は、ほとんど脳を介さない脊髄反射的な言葉を羅列していることが多かった気がします。
語尾に時折「〜サ」とつくことがありますが、特に意味はありません。けれど気に入ってます。これが出ると彼が余裕かましてる証拠です。
彼も保志弘と共に黒歴史を残しているわけですが、その理由は単純に烏嫌いの父親への反発です。作中でも書きましたが、友達になったとある烏との別れに父親が関わっていたため、村正は父親をかなり嫌っています(他の家族との仲はそこまで悪くない)。烏が全て悪であるならば人間は全て善なのか、と父親へ抗議するため、保志弘と共に夜の町を歩き回っていたという設定を今考えましたが何か。
余談ですが、村正は狼、保志弘は熊のイメージがあります。烏どこいった。
村正の名前は「ムナジロガラス」からとっています。「ムナジロ」の「ナジロ」が苗字で(漢字は当時変換一発で出てきた当て字です)、残った「ム」から村正という名前をつけました。
○黄橋玲於奈(キバシ・レオナ)
一番普通の人間でした。登場人物の思想のバランスをとるために作った子なので、当然といえば当然なのですが。
彼女もまた、この作品中かなりの成長が見られました。他者の言葉があったとはいえ、一人であの結論に辿り着ける彼女は、とても強い女なのだなと客観的に思います。憎むより許す方が難しいですからね。
あと彼女に関して特筆すべきは、保志弘との付き合いです。最初はクロウと玲於奈で保志弘を取り合ってもらおうとしていたのだったと思います。ライバル枠です。クロウも保志弘にいろいろ助けてもらっているので、彼に対していい感情はあったと思いますが、恋愛対象ではなかったみたいです。なので玲於奈の勝利。おめでとう。……書き手が恋愛をほとんど経験していないので、このあたりあまり詰めていけなかったのが心残りです。
玲於奈の名前は「キバシガラス」からとりました。苗字そのままですね。下の名前が何故玲於奈なのかは、もう覚えてないです。
○ナミ
クロウの味方が欲しくて作りました。あと、よく喋る人が欲しかったような……。愛だけで敵方に乗り込んでくるくらい単細胞だけど、そこが愛おしいというか、そういう人ほど真理をわかっているというか。でも、思ったより馬鹿さはなくなって、だんだん聡い子になっていきましたね。
彼は外見はお馬鹿だけど、中身はちゃんといろいろ考えています。そういうところは村正みたいですね。村正に感化されているのでしょうか。村正ほど冷静ではないにせよ、彼の経験の中で必死にものを考えています。
玲於奈との絡みが強い子でした。後半ではクロウが問答無用で退場していたので、当然の帰結です。かつて人間に裏切られて、それでも人間を信じたナミは、玲於奈にとっては先輩になりますかね。
この子はなんだかんだで心がタフです。いいお父さんになるでしょう。
名前は「ミナミガラス」からつけました。「ミナミ」だと和の雰囲気が強いので「ナミ」です。
○セレベス
権力のある味方が欲しかったんです(なんて現実的な)。でも権力を振りかざしたら勝ち確定になっちゃうので、そっと見守りつつ必要な時に手を貸してあげたり、相談に乗ってあげたりする、そんな大人の鑑となりました。
彼女も結構泰然としていて、保志弘に似ているところがあるのですが、それは当然ながら保志弘が彼女に似ているのです。烏でありながら人間に溶け込むセレベスさんは、保志弘にとって親であり先輩であり師であります。
女の子好き設定が何故あるのかは、全く覚えていないのですが……キャラ付けなのでしょうか?(訊くな)クロウや玲於奈とのスキンシップにうまく利用できていたので良いのですが。
彼女の名前は「セレベスガラス」からです。
○レドニア
二十一話の村正回で出てきたモブ烏を、サブまで押し上げました。よくよく考えたら、烏を憎む人間はいたのに人間を憎む烏がいなくて、これはバランスが悪いと思い急遽作った次第です。おかげで烏としてのクロウやナミに深みが出たし、烏社会も多少しっかり表現できるようになったかと思います。
粗野な言動が目立ちますが、烏の重鎮の娘。成績は優秀ですし、身なりはちゃんとしていて、実はコガの許嫁だったりします。
彼女の名前は「カレドニアガラス」からとりました。
○コガ
レドニアと同じく、モブをそっと押し上げました。彼の立場は烏寄りですが、他人の感情を見ることができるため、他人を種族ではなく個人として見ることができる存在です。能力が能力なので、保志弘と雰囲気が似ています。
彼の能力では感情が色として見えるのですが、喜、怒、哀、楽にそれぞれ黄、赤、青、緑が割り当てられていて、単色あるいは混色で他人の感情を視認できるという設定です。
彼の名前である「コガ」ですが、メモがなくて元ネタの断定ができません。おそらく「メキシコガラス」からではないかと推察します。レッドが「カレドニア」なので、地名つながり。
○国間マル(コクマ・-)
玲於奈が保志弘からの電話を受けた時、それを恋人だと勘ぐっておちょくる友人がいたら、ラブコメみたいで面白いなって思ったのが始まりだったと思います。よく考えると、玲於奈と彼女は保志弘と村正みたいな関係ですね。
名前はちゃんと烏からとっておりまして、「コクマルガラス」を借りました。「マル」という名前は、烏の名前と同時に、当時好きだった小説の登場人物の名前も重ねています。
○長(オサ)
いわゆるラスボス。その役割故本音を出せないけれど、心根は優しい人だと思っています。
「長」は役職名なので、本当の名前があるはずですが、考えてないですごめんなさい。
○ルッカ
この子を作ろうか否かは非常に悩んだのですが、あの状況でクロウかナミが落ちてくることは考えにくい、けれど予想の斜め上をいく再会にしたいと思って、作ることにしました。それ故にクロウとナミの成長というか、時間の流れを私が強く感じてしまい、なんとなくドキドキしました。
名前は「モルッカガラス」からとりました。最後の最後で名前どうしようかすっごく悩みました。
・「レイヴンズ」の今後について
彼らの人生および烏生は続いていきますが、今後を書くことはおそらくないと思います。
過去は掘り下げたいと思っています。保志弘とクロウそれぞれの学生時代を書きたいところです。が、多分書かないでしょう。書いたとしても、多分サイトに上げないような気がします……。もし上がったら、見てやってください。
・次回作について
「タイカンオンド」という作品を書く予定です。
全四話と短い作品になりますが、「レイヴンズ」の言論による比較的平和な闘争をあざ笑うかのような、血みどろバトルものになるかと思われます。二話までは一応書き上がっていて、読んだ限りホラーみたいな要素もあるので、なんというか、読まれる方はご注意くださいね。
もう少し詳しく説明すると、とある学校で起こる怪現象と、それに悩まされる生徒と、怪現象をぶちのめす謎の四人の話です。
・終わり
これで「レイヴンズ」のあとがきが終わり、つまり「レイヴンズ」が終わります。感慨深いです。というか寂しいです。でも嬉しいです。ないまぜ。
多分、至らないところとか、見てられないところとかたくさんあるんだと思います。むしろない方がおかしい。それでも彼らの物語を書き切れたことが嬉しいです。気づいたらちょこちょこ修正はしていきたいし、もし見つけたら教えてください(事ここに至って尚他力本願)。
それでは次回作、あるいはイラストや音楽、またあるいは今一度この物語の中で、お会いできる事を楽しみにしております。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
「レイヴンズ」、閉幕です。
END.
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